事業承継の株価対策|自社株評価の仕組みと引き下げ方法をわかりやすく解説
「自社株の評価額が思ったより高くて、相続税が心配…」
「株価を下げる方法があるって聞いたけど、具体的にどうすればいいの?」
「自社株の評価方法がよくわからない」
事業承継では、現経営者から後継者へ自社株を引き継ぎます。このとき、株式の評価額に対して相続税や贈与税がかかります。つまり、評価額が高いほど後継者の税負担は大きくなるのです。
中小企業でも、長年の利益の蓄積や資産の値上がりがあります。その結果、自社株の評価額が数千万円〜数億円になるケースは珍しくありません。
この記事では、自社株評価の基本から、評価額を引き下げる方法までをわかりやすく解説します。
📌 この記事でわかること
- なぜ事業承継で株価対策が必要なのか
- 非上場株式の2つの評価方法
- 自社株の評価を引き下げる5つの方法
- 株価対策を行う際の注意点
なぜ事業承継で株価対策が必要なのか
事業承継では、先代経営者が保有する自社株を後継者に移転します。その際、株式の評価額に応じて相続税・贈与税が課されます。
上場企業の株式には市場価格があります。しかし、非上場企業の株式には明確な「値段」がありません。そこで、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて評価額が計算されます。
この評価額は、経営者が思っている以上に高くなることが多いです。
たとえば、業績が好調で内部留保が厚い会社があります。また、保有する土地が値上がりしている会社もあるでしょう。こうした場合、自社株の評価額が想定以上に膨らみます。
その結果、後継者に数千万円〜数億円の税負担が生じます。最悪の場合、事業承継そのものが困難になるケースもあります。
だからこそ、事前に評価額を引き下げておくことが重要です。これが「株価対策」が必要とされる理由です。
株価対策の3つのメリット
株価を引き下げることで、主に3つのメリットがあります。
① 相続税・贈与税の節税
評価額が下がれば、課される税額も小さくなります。
② 後継者の株式取得費用の軽減
従業員承継(MBO)のように株式を買い取る場合、評価額が低いほど費用を抑えられます。
③ 議決権の集中がしやすくなる
評価額が低ければ、一度に多くの株式を移転できます。その結果、経営権の安定につながります。
非上場株式の評価方法を理解しよう
株価対策を行うには、まず評価の仕組みを知る必要があります。非上場株式の評価方法は、会社の規模によって異なります。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、上場している同業他社の株価をもとに評価する方法です。比較の基準は「配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3つです。
この方式は主に大会社に適用されます。一般的に、純資産価額方式より低い評価額になる傾向があります。つまり、3つの要素のいずれかを引き下げれば、株価も下がるのがポイントです。
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の資産と負債をそれぞれ時価で評価する方法です。その差額(純資産)をもとに株価を算出します。
この方式は主に小会社に適用されます。保有する土地や有価証券の含み益が大きいほど、評価額が高くなります。そのため、資産内容の見直しが対策のカギです。
会社規模による評価方法の違い
評価方法は会社の規模で決まります。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式が原則です。
中会社は、この2つを一定の割合で併用します。これを「折衷方式」と呼びます。会社の規模が大きいほど、類似業種比準方式の割合が高くなるのが特徴です。
自社株の評価を引き下げる5つの方法
ここからは、事業承継の現場でよく使われる株価引き下げの方法を5つ紹介します。
方法1:役員退職金の支給
退任する先代経営者に退職金を支給する方法です。退職金は会社の損金として計上できます。そのため、会社の利益と純資産がともに減少します。
その結果、自社株の評価額が下がります。また、役員退職金は通常の給与所得より税負担が軽い点もメリットです。
ただし、注意点もあります。不相当に高額な退職金は損金として認められません。「功績倍率」を基準に適正な金額を設定しましょう。
方法2:役員報酬の引き上げ
役員報酬を適正な範囲で引き上げる方法です。これにより、会社の利益が圧縮されます。その結果、類似業種比準方式での評価額が下がります。
ただし、注意点が2つあります。まず、事業年度の途中で報酬を変更すると損金算入が認められないケースがあります。また、報酬が増えれば経営者個人の所得税も上がります。そのため、バランスを検討することが大切です。
方法3:不動産の取得
会社が不動産を購入する方法です。帳簿上の資産額と相続税評価額に差が生じることを利用します。
具体的には、土地の相続税評価額は時価の約7割です。建物は約6割で評価されます。つまり、現金を不動産に組み替えるだけで純資産価額を圧縮できるのです。
ただし、取得後3年以内は時価で評価されます。そのため、事業承継の3年以上前に購入する計画性が必要です。さらに、「株価引き下げのみが目的」とみなされると否認されるリスクもあります。
方法4:配当金の引き下げ
類似業種比準方式では、配当金額が評価要素の1つです。そのため、事業承継前に配当金を引き下げると、評価額を下げられます。
なお、「特別配当」や「記念配当」は計算に算入されません。つまり、通常の配当を減らしつつ、特別配当で株主に還元する方法も有効です。
方法5:高収益部門の分社化
利益を生み出している事業部門を子会社として切り離す方法です。これを「分社化」と呼びます。
本体会社から高収益部門が分離されることで、利益・純資産が減少します。その結果、自社株の評価額が下がります。
さらに、後継者に子会社の経営を任せることで、後継者育成にもつながります。ただし、スキームが複雑なため、専門家のサポートが欠かせません。
株価対策を行う際の注意点
株価対策は非常に有効です。しかし、いくつかの注意点があります。安易に進めると逆効果になることもあるため、しっかり理解しておきましょう。
注意点1:M&Aを検討している場合は逆効果になることも
M&A(第三者への売却)を検討している場合、株価が高いことはむしろ有利です。過度な株価引き下げは、売却価格を下げてしまいます。そのため、承継方法を決めてから対策に取り組みましょう。
注意点2:租税回避行為とみなされるリスク
株価を下げることだけを目的とした行為は危険です。税務当局から「租税回避」と判断される可能性があります。不動産購入や分社化には、事業上の合理的な理由が必要です。
注意点3:財務状況の悪化に注意
利益や純資産を意図的に減らすと、財務内容が悪化します。その結果、金融機関からの信用力が低下する恐れがあります。融資条件に影響が出ることもあるため、バランスが大切です。
注意点4:早めの着手が不可欠
株価対策には時間がかかるものが多いです。たとえば、不動産取得後3年ルールなどがあります。
「事業承継が近づいてから慌てて対策する」のでは遅いです。基本の5ステップに沿って、3〜5年前から計画的に進めましょう。
事業承継税制との併用も検討しよう
株価対策とあわせて検討したいのが事業承継税制です。この制度を活用すれば、自社株にかかる相続税・贈与税の納税が猶予・免除されます。
株価対策で評価額を引き下げたうえで、事業承継税制を適用するのが理想です。仮に将来、猶予が取り消された場合でも、納税額を最小限に抑えられます。
また、事業承継にかかる費用には補助金・支援制度も活用できます。専門家への相談費用を補助してもらえる制度もあるので、あわせて確認しておきましょう。
まとめ
この記事では、自社株の評価方法と評価額を引き下げる5つの方法を解説しました。
株価対策は、後継者の税負担を軽減するために非常に重要です。ただし、効果を最大限に発揮するには、早めの着手と専門家のサポートが欠かせません。
まずは自社株の現在の評価額を把握するところから始めましょう。顧問税理士や事業承継の相談窓口に相談すれば、最適な対策を提案してもらえます。
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