親族内承継の進め方|後継者選びから株式移転・引き継ぎまでを解説
「子どもに会社を継いでもらいたいけど、何から準備すればいい?」
「親族内承継ってどんな流れで進めるの?」
「相続でトラブルにならないか心配…」
中小企業庁の調査によると、約6割の経営者が親族内承継を最優先で検討しています。子どもや配偶者に会社を引き継ぐ方法は、日本で最も伝統的な承継の形です。
しかし、「親族だから簡単」というわけではありません。後継者の育成や株式の移転、親族間の合意形成が必要です。計画的に進めなければ、トラブルにつながるケースもあります。
この記事では、親族内承継の進め方を5つのステップで解説します。
📌 この記事でわかること
- 親族内承継のメリットとデメリット
- 進め方の5ステップ
- 株式の移転方法と税金対策
- トラブルを防ぐための注意点
親族内承継とは
親族内承継とは、現経営者の子どもや配偶者、兄弟姉妹に会社を引き継ぐ方法です。経営権とともに、自社株式や事業用資産を相続や贈与で移転します。
事業承継には他にも、従業員承継(MBO)やM&Aがあります。それぞれの特徴は「後継者がいないときの4つの選択肢」で詳しく解説しています。
親族内承継の3つのメリット
メリット1:早期から計画的に準備できる
親族が後継者であれば、若い時期から教育を始められます。5年、10年という長期スパンで育成できるのは、親族内承継ならではの強みです。
メリット2:従業員や取引先の理解を得やすい
日本では「社長の子どもが継ぐ」ことが一般的に受け入れられています。そのため、社内外の関係者を納得させやすい利点があります。早い段階から後継者を周知しておけば、よりスムーズです。
メリット3:相続・贈与による株式移転が可能
親族内承継では、自社株を相続や贈与で移転できます。事業承継税制を活用すれば、相続税・贈与税の猶予・免除を受けられる可能性があります。その結果、後継者の経済的負担を大幅に軽減できます。
親族内承継の3つのデメリット
デメリット1:後継者の適性が保証されない
親族だからといって、経営能力があるとは限りません。適性のない人を後継者にすると、経営悪化や従業員の離職につながるリスクがあります。
デメリット2:親族間でトラブルが起きやすい
後継者以外の親族との間で、相続財産の分配をめぐるトラブルが起きることがあります。「自社株は後継者に集中させたいが、他の相続人にも配慮が必要」という課題は、事業承継の失敗事例でも多く見られます。
デメリット3:個人保証の引き継ぎ
現経営者が会社の借入に個人保証を入れている場合、後継者がこれを引き継ぎます。大きな負担に不安を感じ、承継をためらう後継者も少なくありません。「経営者保証に関するガイドライン」の活用で負担を軽減できます。
親族内承継の進め方5ステップ
ここからは、具体的な進め方を5つのステップで解説します。全体の流れは事業承継の基本5ステップと共通する部分も多いので、あわせて参考にしてください。
ステップ1:後継者の選定と意思確認
まず、親族の中から後継者候補を選びます。そして、本人の意思を確認しましょう。
「経営者になる覚悟があるか」「会社を成長させる意欲があるか」を率直に話し合います。子どもが複数いる場合は、経営者としての適性を冷静に見極めることが大切です。
ステップ2:後継者の育成
後継者が決まったら、育成期間に入ります。育成には最低5〜10年かかると言われています。
社内での育成としては、各部門のローテーションや経営会議への参加があります。社外での育成としては、取引先での勤務経験やセミナー参加が効果的です。
また、育成と並行して、従業員や取引先への紹介も進めましょう。「この人が次の経営者になる」と周知することで、周囲の信頼が後継者の成長を促します。詳しくは「後継者育成の5つのステップ」をご覧ください。
ステップ3:株式・資産の承継計画を立てる
経営権を確実に移転するには、自社株の過半数以上を後継者に集中させる必要があります。株式の移転方法は主に3つです。
生前贈与は、現経営者が生きているうちに株式を贈与する方法です。計画的に少しずつ移転できます。ただし、贈与税が発生します。
相続は、現経営者の死亡時に株式が移転する方法です。遺言書がなければ、法定相続分に従って株式が分散するリスクがあります。
売買は、後継者が株式を買い取る方法です。適正な時価での取引が必要で、資金力が求められます。
いずれの方法でも、自社株の評価額と株価対策を事前に把握しておくことが重要です。
ステップ4:税金対策と遺言書の準備
親族内承継では、相続税・贈与税の対策が欠かせません。主な対策は以下の通りです。
事業承継税制の活用:一定の要件を満たせば、納税が猶予・免除されます。詳しくは「事業承継税制とは?」で解説しています。
暦年贈与の活用:年間110万円までの贈与は非課税です。長期にわたって計画的に移転すれば、税負担を分散できます。
遺言書の作成:自社株を確実に後継者に渡すには、遺言書が不可欠です。遺言がなければ、株式が分散して経営権が不安定になります。遺留分にも配慮しながら、公正証書遺言の形で準備しましょう。
税金対策の費用には補助金・支援制度を活用できる場合もあります。
ステップ5:経営権の移転と引き継ぎ
準備が整ったら、代表者の変更を行います。具体的には、変更登記、各種届出、個人保証の切り替えなどです。
移転後も、前経営者が会長や顧問としてサポートするのが一般的です。ただし、いつまでも口を出し続けると、後継者の自立を妨げます。引き際の意識も大切です。
親族内承継を成功させるポイント
① とにかく早く準備を始める
後継者の育成には5〜10年かかります。現経営者が元気なうちに、できるだけ早く着手しましょう。
② 後継者以外の親族にも配慮する
自社株を後継者に集中させる場合、他の相続人への配慮が必要です。別の財産で手当てするなど、公平性を保つことがトラブル防止のカギです。詳しくは「相続トラブルを防ぐ方法」をご覧ください。
③ 専門家に相談する
株式の評価、税金対策、遺言書の作成など、専門知識が必要な場面が多いです。税理士、弁護士、事業承継の相談窓口を積極的に活用しましょう。
まとめ
この記事では、親族内承継のメリット・デメリットと5つのステップを解説しました。
親族内承継は、経営理念や企業文化を守りやすく、従業員の安心感も大きい方法です。一方で、後継者の育成や親族間の合意形成には時間と準備が必要です。
まずは事業承継・引継ぎ支援センター(無料)や顧問税理士に相談してみてください。
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