親族承継・従業員承継

従業員承継(MBO)とは?進め方・メリット・デメリットをわかりやすく解説

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「親族に後継者がいないけれど、信頼できる社員に会社を任せたい」

「従業員承継って聞いたことはあるけど、具体的にどう進めればいいの?」

「MBOの仕組みや資金調達の方法がよくわからない」

近年、親族に後継者がいない中小企業が増えています。そのなかで注目されているのが、従業員承継(MBO)です。

帝国データバンクの調査によると、内部昇格による事業承継が親族内承継を上回りました。つまり、従業員承継は今やもっとも多い承継方法なのです。

従業員承継では、会社をよく知る役員や社員が後継者になります。そのため、経営の一貫性が保たれやすい点が大きな強みです。一方で、株式の買い取り資金など、特有の課題もあります。

この記事では、従業員承継の基本から進め方までをわかりやすく解説します。

📌 この記事でわかること

従業員承継(MBO)とは?

従業員承継とは、現経営者の親族以外の役員や従業員に会社を引き継ぐ方法です。

英語では「MBO(Management Buy Out)」と呼ばれます。具体的には、経営陣が自社の株式を買い取って経営権を取得する仕組みです。

なお、役員ではなく一般従業員が株式を取得する場合もあります。これは「EBO(Employee Buy Out)」と呼ばれます。ただし、実務上はMBOとEBOをまとめて「従業員承継」と呼ぶのが一般的です。

親族内承継・M&Aとの違い

事業承継には大きく3つの方法があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

親族内承継は、子どもや配偶者など親族に引き継ぐ方法です。株式は相続や贈与で移転できます。ただし、後継者の適性や親族間トラブルのリスクがあります。

従業員承継(MBO)は、社内の役員・従業員に引き継ぐ方法です。会社を熟知した人材が後継者になります。そのため、経営の一貫性が保たれやすい点が特徴です。一方で、株式の買い取り資金が必要です。

M&A(第三者承継)は、外部の企業や個人に会社を売却する方法です。幅広い候補から最適な相手を探せます。ただし、企業文化の変化や従業員の不安が生じやすい面があります。

このように、それぞれの方法に長所と短所があります。自社の状況に合わせて選ぶことが大切です。詳しくは「後継者がいないときの4つの選択肢」で解説しています。

従業員承継(MBO)の5つのメリット

メリット1:経営理念・企業文化が守られる

長年勤めてきた役員や従業員が後継者になります。そのため、これまでの経営方針や社風がそのまま引き継がれます。

また、M&Aのように外部の企業が入るわけではありません。従業員も安心して働き続けられます。

メリット2:従業員・取引先の理解を得やすい

社内でよく知られた人物が社長に就任します。そのため、従業員の反発や取引先の不安が起きにくいのが特徴です。

M&Aによる承継と比べて、関係者の負担が少ないです。結果として、スムーズに引き継ぎが進みます。

メリット3:後継者候補の幅が広がる

親族に後継者がいなくても問題ありません。優秀な役員や従業員を後継者に選べます。つまり、血縁ではなく「経営者としての適性」で選べるのです。

メリット4:経営の透明性が高まる

同族経営から脱却することで、経営判断がより客観的になります。その結果、透明性が向上します。取引先や金融機関からの信頼向上にもつながります。

メリット5:情報漏洩のリスクが低い

M&Aでは社外の相手と交渉するため、情報管理に注意が必要です。しかし、従業員承継では社内で完結します。そのため、機密情報が外部に漏れるリスクを低く抑えられます。

従業員承継(MBO)の3つのデメリット

デメリット1:株式の買い取り資金が必要

従業員承継では、後継者が現経営者から株式を有償で買い取るのが一般的です。

親族内承継であれば、贈与や相続で株式を移転できます。しかし、親族外の場合はそれができません。会社の規模によっては、数千万円〜数億円の資金が必要です。そのため、資金調達が最大のハードルになります。

デメリット2:個人保証の引き継ぎ問題

中小企業の経営者は、会社の借入に個人保証を入れているケースが多いです。後継者がこの個人保証を引き継ぐことに不安を感じることもあります。

そのため、承継をためらうケースも少なくありません。「経営者保証に関するガイドライン」を活用して、負担軽減を図ることが大切です。

デメリット3:抜本的改革が進みにくい場合がある

社内の人間が後継者になると、これまでの方針が踏襲されがちです。良い面もありますが、課題もあります。

たとえば、業界環境が大きく変化している場合です。外部からの視点が入りにくく、改革が遅れるリスクがあります。

株式の買い取り資金を調達する3つの方法

従業員承継の最大の課題は「資金調達」です。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。

方法1:自己資金

後継者自身の貯蓄で株式を買い取る方法です。手続きがシンプルで、外部に依存しません。

ただし、中小企業の株式でも数千万円以上になることが多いです。そのため、自己資金だけでまかなうのは難しいのが現実です。

方法2:金融機関からの融資

日本政策金融公庫や民間銀行から融資を受ける方法です。

特に、日本政策金融公庫には「事業承継・集約・活性化支援資金」があります。事業承継向けの融資制度で、比較的低金利で利用できます。ただし、企業の財務状況が良好であることが条件です。

方法3:SPC(特別目的会社)の活用

後継者がSPC(特別目的会社)を設立する方法です。このSPCが金融機関やファンドから資金を調達し、株式を買い取ります。

後継者個人の負担を抑えつつ、必要な資金を確保できるのがメリットです。ただし、スキームが複雑なため、専門家のサポートが必須です。

資金面の不安がある方は、「事業承継で使える補助金・支援制度」も確認しておきましょう。仲介手数料やデューデリジェンス費用の補助を受けられる場合があります。

従業員承継(MBO)の進め方5ステップ

従業員承継の基本的な流れは、事業承継の基本5ステップと共通しています。ここでは、従業員承継に特化したポイントを解説します。

ステップ1:後継者候補の選定

まずは社内から後継者候補を選びます。ポイントは「経営者としての資質」「社内外からの信頼」「本人の意思」の3つです。

いきなり1人に絞る必要はありません。複数の候補者を比較検討しましょう。

ステップ2:後継者の育成・教育

候補者が決まったら、経営者として必要なスキルを身につけてもらいます。

具体的には、経営会議への参加や重要な取引先との関係構築があります。また、財務知識の習得や外部の経営研修への参加も有効です。育成期間は最低3〜5年を見ておきましょう。

ステップ3:株式の評価と資金調達計画

株式の適正な評価額を算出します。そのうえで、資金調達の方法を検討します。

自社株の評価方法は複雑です。そのため、税理士や公認会計士に相談することをおすすめします。また、事業承継税制が使える場合もあるので、あわせて検討しましょう。

ステップ4:関係者への説明と合意形成

従業員、取引先、金融機関など、関係者に事業承継の計画を説明します。特に、現経営者の親族には丁寧な説明が必要です。

MBOでは「なぜ親族ではなく従業員に承継するのか」を明確に伝えましょう。これがトラブル防止につながります。

ステップ5:株式譲渡の実行と経営権の移転

資金調達が整ったら、株式譲渡契約を締結します。そして、経営権を移転します。

同時に、代表者の変更登記や個人保証の切り替え、各種届出も行います。承継後も一定期間は前経営者が顧問として関わると、スムーズな引き継ぎが可能です。

従業員承継を成功させるポイント

従業員承継を成功に導くために、特に重要な3つのポイントを紹介します。

① 早めに準備を始める

後継者の育成には最低3〜5年かかります。「もう少し先でいい」と後回しにしないことが大切です。

できるだけ早い段階から候補者の選定と育成に取りかかりましょう。詳しくは「事業承継の進め方がわかる!基本の5ステップ」を参考にしてください。

② 資金調達の方法を早めに検討する

株式の買い取り資金は、従業員承継の最大のハードルです。

自己資金、融資、ファンドなど、複数の選択肢があります。早い段階から検討し、計画的に準備を進めましょう。

③ 専門家の力を借りる

株式評価、資金調達スキーム、税務対策、法務手続きなど、専門知識が必要な場面が多いです。

そのため、税理士、弁護士、事業承継・引継ぎ支援センターなどを積極的に活用しましょう。相談先について詳しくは「事業承継の相談先7選」をご覧ください。

まとめ

この記事では、従業員承継(MBO)の仕組みやメリット・デメリット、進め方を解説しました。

従業員承継は、会社をよく知る人材に引き継げる方法です。そのため、経営の一貫性が保たれやすく、従業員や取引先の理解も得やすいのが強みです。一方で、株式の買い取り資金の確保が最大の課題です。

親族に後継者がいなくても、信頼できる従業員がいれば会社を存続させる道はあります。まずは事業承継・引継ぎ支援センター(無料)に相談してみてください。

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