事業承継の相続トラブルを防ぐ方法|遺言書・遺留分・生前対策をわかりやすく解説
「自社株を後継者に集中させたいけど、他の相続人ともめないか不安…」
こうした悩みに加えて、遺留分の影響や、遺言書がないまま相続が発生した場合のリスクも気になるところです。
親族内承継では、後継者に自社株式を集中させる必要があります。
しかし、何の対策もしないまま相続が発生すると、財産が法定相続分で分散します。その結果、経営権の確保が困難になるリスクがあります。
さらに、後継者に財産を集中させると、他の相続人の「遺留分」を侵害することがあります。これが親族間の争いに発展するケースも少なくありません。
この記事では、相続トラブルの原因と具体的な防止策を解説します。
📌 この記事でわかること
- 相続トラブルが起きる3つの原因
- 遺留分の基本と事業承継への影響
- 遺言書の作り方と注意点
- 特例制度と生命保険の活用法
事業承継で相続トラブルが起きる3つの原因
原因1:遺言書がない
まず、遺言書がなければ、財産は法定相続分で分配されます。自社株式も相続人全員に分散してしまいます。
その結果、後継者が十分な議決権を確保できなくなります。
加えて、遺産分割協議で合意できなければ、事業承継が長期間停滞するリスクもあります。
原因2:遺留分の侵害
次に、遺言で後継者に自社株を集中させても、問題が起きることがあります。具体的には、他の相続人の遺留分を侵害していると、「遺留分侵害額請求」をされる可能性があるのです。
その場合、後継者が多額の代償金を支払うことになれば、経営資金が圧迫されます。
原因3:自社株の評価額が想定以上に高い
また、非上場企業の株式は、業績好調時には想定以上に高額になります。評価額が高いと、相続税の負担が大きくなります。
遺留分の金額も膨らみ、トラブルに発展しやすくなります。そのため、株価対策を事前に講じておくことが重要です。
これらのトラブルの多くは、事業承継の失敗事例にもあるように、準備不足が原因です。
遺留分の基本を理解しよう
そもそも遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人に保障された最低限の相続分です。
つまり、すべての財産を遺言で特定の人に渡しても、遺留分を持つ相続人はその権利を主張できます。
遺留分が認められる人
遺留分が認められるのは、配偶者、子ども(孫)、直系尊属(親・祖父母)です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
具体的な割合は、原則として法定相続分の2分の1です。
たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合を考えましょう。配偶者の遺留分は全体の4分の1、子どもはそれぞれ8分の1です。
事業承継への影響
このように、後継者に自社株を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害しやすくなります。
遺留分を侵害しても遺言自体は無効になりません。ただし、侵害された相続人は金銭の支払いを請求できます。
対策1:遺言書を作成する
まず、相続対策の第一歩は遺言書の作成です。遺言書があれば、後継者に自社株を確実に相続させられます。加えて、相続人間での分割協議による混乱も防げます。
公正証書遺言がおすすめ
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。事業承継では公正証書遺言を強くおすすめします。
その理由は2つあります。ひとつは、公証人が作成に関与するため、形式不備で無効になるリスクが低い点です。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失の心配もありません。
遺言書作成のポイント
はじめに、自社株の相続先を明記しましょう。「長男〇〇に、株式会社△△の株式すべてを相続させる」と具体的に記載することが大切です。
次に重要なのは、遺留分への配慮です。後継者以外の相続人には、自社株以外の財産を分配します。遺留分を侵害しない内容が理想です。
もうひとつのポイントは、付言事項の活用です。付言事項とは、法的効力はないものの、家族へのメッセージを記載できる部分です。なぜこの遺言にしたのかを記しておくと、他の相続人の理解を得やすくなります。
対策2:経営承継円滑化法の「遺留分の特例」を活用する
遺言だけでは遺留分侵害を防げない場合があります。そこで活用したいのが、経営承継円滑化法の「遺留分の特例」です。
除外合意と固定合意
除外合意は、後継者に贈与された自社株を遺留分の計算から除外する方法です。自社株の価値がいくら高くても、他の相続人の遺留分に影響しなくなります。
固定合意は、自社株の評価額を贈与時の価額に固定する方法です。相続時までに株価が上昇しても、贈与時の低い価額で計算されます。
特例を利用するための条件
この特例を利用するには、推定相続人全員の合意が必要です。合意後、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を得ます。
そのため、全員の合意が必要なため早めの話し合いが大切です。しかし、活用できれば非常に強力な対策になります。
対策3:生前贈与で計画的に株式を移転する
さらに、現経営者が生きているうちに自社株を贈与する方法も有効です。相続を待たずに確実に移転でき、後継者の経営権を早期に安定させられます。
ただし、生前贈与には贈与税が発生します。税負担を軽減するには、事業承継税制の活用が効果的です。一定の要件を満たせば、贈与税が猶予・免除されます。
あるいは、暦年贈与(年間110万円の非課税枠)を活用する方法もあります。長期にわたって少しずつ移転すれば、税負担を分散できます。
いずれの方法でも、贈与の際は必ず契約書を作成し、記録を残しましょう。
対策4:生命保険を活用する
そのほかに、遺留分対策として生命保険の活用も効果的です。原則として、生命保険金は遺留分の計算に含まれません。
生命保険活用のメリット
後継者を受取人に指定しておけば、遺留分侵害額を請求された際に代償金の支払い原資として使えます。
さらに、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があります。そのため、相続税対策にもなります。
対策をスムーズに進めるために
相続対策は「まだ元気だから大丈夫」と後回しにしないことが最も重要です。
事業承継の5ステップにあるように、5〜10年前から準備を始めましょう。
なお、遺言書の作成や遺留分対策には、税理士や弁護士の協力が不可欠です。事業承継の相談先や補助金・支援制度も活用しながら、計画的に進めましょう。
まとめ
以上のように、この記事では相続トラブルの原因と4つの防止策を解説しました。
なかでも、遺言書の作成は最低限の必須対策です。遺留分への配慮と組み合わせれば、トラブルの大部分は防げます。
経営承継円滑化法の特例や生命保険を活用すれば、より万全な体制が整います。大切な家族と会社を守るために、早い段階から専門家に相談しましょう。
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