M&A・第三者承継

個人M&A・スモールM&Aとは?サラリーマンでもできる事業承継の新しいかたち

個人で会社を買う」——そんな時代が来ています

「M&Aって、大企業が何十億円もかけてやるものでしょ?」

そう思っていませんか?実はいま、会社員や個人事業主が数百万円で会社や事業を買い取る「個人M&A」「スモールM&A」が急速に広がっています。

その背景にあるのが、中小企業の後継者不在問題です。全国の中小企業のうち52.1%が後継者不在(帝国データバンク 2024年調査)。「事業は黒字なのに、継いでくれる人がいない」——そんな会社がたくさんあるのです。

こうした会社を、「引き継ぎたい」という個人が買い取る。売り手の経営者は安心して引退でき、買い手は既に動いている事業をゼロから立ち上げることなく手に入れられる。お互いにとって価値のあるこの仕組みが、いま注目を集めています。

この記事では、「個人M&A・スモールM&Aって何?」という基本から、メリット・リスク、案件の探し方まで、はじめての方にもわかりやすくお伝えします。


📌 この記事でわかること


個人M&A・スモールM&Aとは

個人M&Aとは

個人M&Aとは、法人ではなく「個人」が自己資金や借入金を使って、会社や事業を買い取ることです。会社員が副業として、あるいは脱サラして経営者になるために活用するケースが増えています。

スモールM&Aとは

スモールM&Aとは、取引金額が比較的小さいM&Aの総称です。明確な定義はありませんが、一般的には売買価格が数百万円〜数千万円程度の案件を指すことが多いです。

個人M&AとスモールM&Aは重なる部分が大きく、「個人が買い手になるスモールM&A」というイメージで問題ありません。

どんな事業が売買されているの?

実際にマッチングサイトで取引されている事業は、たとえばこんなものがあります。

価格帯も幅広く、WEBサイトなら数十万円から、リアル店舗でも数百万円〜1,000万円程度で買えるものが数多く掲載されています。


なぜいま個人M&Aが注目されているのか

個人M&Aが広がっている理由は、いくつかあります。

① 後継者不在の会社が増えている

中小企業の後継者不在率は52.1%。約127万社が後継者未定のまま経営者の高齢化が進んでいます。こうした会社の「受け皿」として、個人の買い手が求められています。

② マッチングサイトが普及した

BATONZ(バトンズ)やTRANBI(トランビ)などのM&Aマッチングサイトの普及により、個人でもオンラインで案件を探し、売り手に直接コンタクトできるようになりました。以前は仲介会社に高い手数料を払わなければアクセスできなかった情報が、無料で見られる時代になったのです。

③ 働き方の多様化

副業解禁、リモートワーク、FIRE(早期リタイア)ブームなどの影響で、「会社員をしながら経営者にもなる」という選択肢に注目が集まっています。ゼロから起業するよりリスクが低いと感じる人が増えていることも追い風です。

④ 国や公的機関の支援が充実

事業承継・引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」では、事業を引き継ぎたい個人と後継者不在の経営者をマッチングしています。日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援や、事業承継・引継ぎ補助金など、個人が使える制度も増えています。


買い手にとってのメリット

個人がM&Aで事業を買うことには、ゼロからの起業にはないメリットがあります。

既にお客さんがいる状態でスタートできる

起業で一番大変なのは「最初のお客さんを見つけること」です。M&Aで既存の事業を引き継げば、お客さん・取引先・従業員・設備がすでに揃った状態からスタートできます。ゼロイチの苦労をスキップできるのは、大きなアドバンテージです。

創業に比べてリスクが見えやすい

買収前に売上や利益の実績データを確認できるため、「このビジネスがどれくらい稼げるのか」を数字で判断できます。まったく見通しのないゼロからの起業と比べると、リスクの見積もりがしやすいのが特長です。

少額から始められる

スモールM&Aなら数百万円から事業を取得できます。自己資金が足りない場合は、日本政策金融公庫の融資を活用する方法もあります。事業承継に関連する融資は、一般的な創業融資よりも実績があるぶん審査が通りやすいケースもあるようです。

新しい収入源・キャリアの柱になる

会社員の方にとっては副収入の源として、定年退職を控えた方にとってはセカンドキャリアの手段として、個人M&Aは新しい可能性を開いてくれます。


知っておきたいリスクと注意点

もちろん、個人M&Aにはリスクもあります。甘く見ると大きな失敗につながるので、しっかり押さえておきましょう。

「安いから」で飛びつかない

価格が安い案件には、安いなりの理由があることがほとんどです。売上が減少している、設備が老朽化している、従業員が辞めそう……。価格だけで判断せず、なぜその価格なのかを丁寧に確認してください。

情報開示が不十分なことがある

大企業のM&Aと違い、小規模な会社では財務諸表がきちんと整備されていない場合もあります。帳簿に載っていない負債(簿外債務)がないか、税務に問題はないかなど、専門家の力を借りたデューデリジェンス(調査)が欠かせません。

「自分でもできるはず」が落とし穴

事業の内容に詳しくても、「経営者として組織をまとめる」のは別のスキルです。特に従業員を引き継ぐ場合、前オーナーとの信頼関係が前提で働いていた人たちとの関係構築は、想像以上に繊細な作業になります。

身の丈に合った案件を選ぶ

個人M&A初心者が手を出すべきでない案件もあります。規模が大きすぎる案件、競合する買い手に大企業がいる案件、自分のスキルとかけ離れた業種の案件——こうしたものは避けたほうが無難です。

まずは小さな案件で経験を積み、自信がついてから次のステップに進むのが賢明です。


売り手(経営者)にとっての個人M&A

ここまで「買い手」の目線で話してきましたが、この記事を読んでいる方の中には、「自分の会社を個人に引き継いでもらうのはどうなんだろう?」と考える経営者もいらっしゃるかもしれません。

個人への承継は、実はメリットも多い選択肢です。

■ 事業への共感で引き継いでもらえる

個人の買い手は「この事業をやりたい」「この仕事に惚れた」という動機で買収を決めるケースが多いです。あなたが大切にしてきた事業への想いを理解してくれるパートナーと出会えることがあります。

■ 地域の事業が守られる

地方の小規模な事業は、大手企業の買収対象にはなりにくいもの。個人の買い手がいることで、大企業が拾わないような小さな事業にも、承継の道が開けます。

■ 後継者人材バンクで出会える

事業承継・引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」に登録すれば、事業を引き継ぎたいと考えている個人とマッチングしてもらえます。公的機関が間に入るため、安心感もあります。


案件の探し方と基本的な流れ

案件を探す3つの方法

① M&Aマッチングサイト

BATONZ、TRANBI、M&Aナビ、スピードM&Aなど、個人でも利用できるマッチングサイトが多数あります。まずは登録して、どんな案件があるのか眺めてみるだけでも勉強になります。

② 事業承継・引継ぎ支援センター

全国47都道府県に設置された公的窓口。後継者人材バンクに登録すると、マッチングの機会が得られます。相談は無料、秘密厳守です。

③ 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援

公庫の取引先の中から、後継者を探している経営者を紹介してもらえる仕組みです。資金調達の相談も一括でできるメリットがあります。

個人M&Aの基本的な流れ

  1. 案件を探す — マッチングサイトや公的機関で興味のある案件を見つける
  2. 売り手にコンタクト — 秘密保持契約(NDA)を結んで、詳しい情報を確認する
  3. トップ面談 — 売り手の経営者と直接会って、お互いのビジョンを確認する
  4. 基本合意 — 大まかな条件で合意する
  5. デューデリジェンス — 財務・法務・税務を専門家と一緒にチェックする
  6. 最終契約・引き渡し — 正式に契約を結び、事業を引き継ぐ

小規模な案件であれば、2〜6ヶ月程度で完了するケースもあります。ただし、焦りは禁物。わからないことは専門家に相談しながら、慎重に進めてください。


個人M&Aを検討するあなたへ——大切にしてほしい3つのこと

① 「なぜ自分がこの事業を買いたいのか」を明確にする

「儲かりそうだから」だけで飛びつくと、壁にぶつかったときに踏ん張れません。「この分野が好き」「このスキルを活かしたい」「この地域に貢献したい」——自分なりの動機をはっきりさせておくことが、成功の土台になります。

② 小さく始める

最初から大きな案件に挑む必要はありません。まずは小さなオンライン事業を買ってみる、あるいはマッチングサイトに登録して案件を見るところから始めてみてください。経験を積むうちに、「自分に合った案件」がだんだん見えてきます。

③ 一人で抱え込まない

法務・税務・財務など、専門的な知識が必要な場面が必ず出てきます。事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、税理士や弁護士への依頼、M&Aアドバイザーの活用など、頼れる専門家の力を借りることを遠慮しないでください。


まとめ

この記事では、個人M&A・スモールM&Aの基本をお伝えしました。

おさらいしておきましょう:

「自分が経営者になる」と聞くと大きな決断に感じるかもしれません。でも、まずはマッチングサイトを覗いてみる、支援センターに相談してみる——そこから始めれば、思ったよりもハードルは低いと感じるはずです。

あなたの一歩が、後継者を探している経営者の希望になるかもしれません。


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