M&Aの最終契約書(SPA)とは?確認すべき条項と注意点をわかりやすく解説
SPA締結の流れと所要期間
最終契約書(SPA)の締結は、通常以下の流れで進みます。
ステップ1:ドラフトの作成(1〜2週間)
一般的には買い手側の弁護士がSPAのドラフトを作成します。DD結果を踏まえた内容が反映されるため、DDの完了後に作成を開始します。
ステップ2:条件交渉(2〜4週間)
売り手・買い手双方の弁護士がドラフトを確認し、修正要望を出し合います。特に交渉が長引きやすいのは、表明保証の範囲、補償の上限額と期間、競業避止義務の範囲です。
この段階で互いに譲れないポイントが出てきた場合は、仲介会社やFAが調整役を担います。
ステップ3:最終確認と署名(1〜2週間)
双方が合意した内容で最終版を作成し、署名・捺印します。中小企業のM&Aでは、SPA締結からクロージングまでの期間は1〜3ヶ月程度が一般的です。
SPA交渉で押さえるべき3つのコツ
コツ1:DDの指摘事項をSPAに反映させる
DDで発見されたリスクは、SPAの表明保証や補償条項に反映させるのが基本です。DDで問題が見つかったのにSPAに反映されていないと、後からトラブルが発生した際に法的な保護を受けられません。
買い手側は「DDで見つかった問題をどう契約条件に落とし込むか」を弁護士と綿密に相談しましょう。
コツ2:表明保証の範囲は「広すぎず・狭すぎず」
買い手はリスクを最小化するため表明保証の範囲を広くしたがります。売り手はリスクを限定したいため狭くしたがります。
現実的な落とし所は、「売り手が知りうる範囲の事項」に限定する方法です。「知る限り(to the best of seller’s knowledge)」という限定を付けることで、売り手が本当に知らなかった問題まで責任を負わずに済みます。
コツ3:クロージング後の引き継ぎ期間を契約に含める
前経営者の引き継ぎ(PMI支援)期間を、SPAに盛り込んでおくと安心です。「クロージング後6ヶ月間、月○回の顧問対応を行う」など具体的に定めておくと、承継後のトラブルを防げます。
SPA締結時の費用相場
SPAの作成・レビューにかかる弁護士費用は、取引規模によって異なります。
- 小規模M&A(譲渡価格1,000万〜5,000万円):弁護士費用 30万〜80万円
- 中規模M&A(譲渡価格5,000万〜3億円):弁護士費用 80万〜200万円
- 大規模M&A(譲渡価格3億円以上):弁護士費用 200万円〜
M&A仲介会社を利用している場合、仲介手数料にSPA作成支援が含まれることもあります。ただし、SPAの法的チェックは必ず自社側の弁護士に依頼すべきです。仲介会社はあくまで中立の立場であり、一方の利益を守る義務はありません。
よくある質問(FAQ)
Q. SPAとLOI(基本合意書)の違いは何ですか?
LOI(Letter of Intent)はM&Aの初期段階で締結される意向表明書で、法的拘束力は限定的です。SPAはDDの結果を踏まえて作成される最終的な契約書で、法的拘束力があります。LOIで合意した条件がDDの結果によって変わることもあるため、LOIの内容がそのままSPAに反映されるとは限りません。
Q. SPAの契約書は何ページくらいですか?
中小企業のM&Aでは、20〜50ページ程度が一般的です。大企業同士のM&Aでは100ページを超えることもあります。ページ数が多いことが良い契約書とは限りませんが、重要な条項が漏れなく記載されていることが大切です。
Q. SPA締結後にキャンセルはできますか?
SPA締結後のキャンセルは、原則としてクロージング条件が満たされない場合に限られます。「気が変わった」という理由でのキャンセルは契約違反となり、損害賠償を請求される可能性があります。そのため、SPA締結前に十分な検討が必要です。
「M&Aの契約書って何が書いてあるの?」
「表明保証って何?」
「契約書で見落としてはいけないポイントは?」
M&Aでは、デューデリジェンスが完了した後に最終契約書(SPA)を締結します。この契約書が、取引条件を法的に確定する最も重要な書類です。
この記事では、SPAの主な条項と注意点を解説します。
最終契約書(SPA)の位置づけ
M&Aの流れの中で、SPAは「基本合意→DD→最終契約→クロージング」の段階で締結されます。基本合意書は法的拘束力が限定的です。一方、SPAは法的拘束力を持つ正式な契約です。
株式譲渡の場合はSPA、事業譲渡の場合はAPAと呼ばれます。中小企業では株式譲渡が一般的なため、本記事ではSPAを中心に解説します。
最終契約書の主な条項
① 取引の基本条件
譲渡する株式数、譲渡価格、支払方法、支払時期を明記します。価格は株価評価に基づきますが、DD結果で調整されることもあります。
② 表明保証(レプワラ)
SPAで最も重要な条項です。売り手と買い手が「以下の事項が真実である」と宣言します。
売り手側の主な内容は、財務諸表の正確性、簿外債務の不存在、訴訟の不存在、許認可の有効性、労働問題の不存在などです。
表明保証に違反があった場合、損害賠償請求の根拠になります。つまり、DDで見つからなかったリスクに対するセーフティネットです。
③ 誓約事項(コベナンツ)
契約締結からクロージングまでの間に守るべき義務です。売り手には、多額の借入や重要資産の処分をしないことが求められます。買い手には、雇用条件の維持などが含まれる場合があります。
④ 競業避止義務
前経営者が一定期間、同業の事業を行わないことを約束する条項です。期間は2〜5年が一般的です。この条項がないと、売り手が同じ事業を始めるリスクがあります。
⑤ 補償条項(インデムニティ)
表明保証違反があった場合の損害賠償に関する条項です。補償の上限額、請求期限、最低請求額を定めます。
中小企業M&Aでは、上限を譲渡価格の30〜100%、期間を1〜3年とするケースが多いです。
⑥ クロージング条件
M&A完了の前提条件を定めます。許認可の変更、取引先の同意、経営者保証の切り替え、雇用継続の確認などが含まれます。
売り手が注意すべきポイント
表明保証の範囲を限定する
「知る限りにおいて」という限定を付けることで、意図しない違反リスクを軽減できます。DDで開示済みの事項を対象外とする「開示例外」も重要です。
補償条項の上限と期限を確認する
上限がなければ、譲渡対価を超える損害賠償を請求される可能性があります。上限と期限は必ず設定しましょう。
競業避止の範囲を確認する
地域や期間、対象業種が広すぎないかを確認します。退職後の生活に過度な制約がかからない範囲で合意しましょう。
買い手が注意すべきポイント
表明保証を充実させる
DDで確認しきれなかったリスクへの防衛線です。簿外債務、税務リスク、取引先の契約継続性について、しっかりと保証を求めましょう。個人M&Aのチェックリストも参考にしてください。
前経営者の引継ぎ条件を明記する
PMIを円滑に進めるため、引継ぎ期間・役割・報酬を契約書に明記しましょう。
弁護士にレビューを依頼する
SPAは法的な専門知識が不可欠です。M&A経験のある弁護士に必ずレビューを依頼しましょう。M&Aの費用として弁護士費用も予算に入れておきます。
まとめ
SPAはM&Aの成否を左右する重要書類です。表明保証、補償条項、競業避止義務を正しく理解しましょう。
売り手・買い手双方が納得できる内容にすることが大切です。専門家のサポートを受けながら、慎重に交渉を進めましょう。
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